あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。

働き方改革がうんたらかんたら言われてるようですね。
無職には働き方とか関係のない話ではあるのですが、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』という本を読みました。

この本ですが、「脱社畜ブログ」というブログを運営している日野さんが書かれた本です。最近はブログの更新頻度はそこまで高くないですが、昔は結構更新されていました。その時はまだ名前も出してなかったですかね。昔の記事を遡ればどういったことを書いている人かよくわかると思います。

あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』というタイトルを聞いた時にどう感じたでしょう。
少しでも違和感を感じたという人は要注意かもしれませんね。
日本の変な働き方に染まっているかも。
社畜になる素質ありです。

別に「やりがい」よりも残業代を求めることは変なことではありません。そう考える人がいてもおかしくない。
そもそもあたりまえのことです。
この本には終始こういったあたりまえのことだけが書かれています。
どういったことが書かれているか少し紹介しましょうか。

残業

毎日毎日、夜遅くまで働いている人はそれだけで、「がんばっている人」とみなされます。実際にはダラダラと時間をかけてゆっくり仕事をしているだけでも、夜遅くまで会社に残って仕事をしている人は「仕事に一生懸命取り組んでいる人」ということになります。
一方で、仕事の効率を高め、テキパキと自分の仕事を片付けて残業せずに帰宅しようとする人は、あまり評価されません。最悪の場合、「残業しないで毎日定時で帰る怠け者」だとみなされて低い評価を受けることすらありえます。
こういう単純で表面的な評価方法がまかり通っているかぎり、ダラダラと長い時間をかけて仕事をしたほうが結果的に得ということになります。

これ、ありますよねぇ。残業してるやつががんばってるって思われがち。
本来は仕事の効率を高めた方が生産性がいいわけだから、評価されるべきなんですけどね。もちろん同じ業務をしてる場合に言えることですけど。

残業についての記述は他にもあるんですが、どれもあたりまえのことばかり。
いったい日本の会社はいつ変わるの?
この本の中にも日本に働きに来た外国人の方の話が書かれていたのですが、毎日遅くまで必死に働いていることが理解できないし、上司より早く帰ってはいけないという暗黙のルールがおかしいと思ったそうです。
確かに普通に考えたらおかしな話ですよ。

サービス残業

残業代を払わないというのは、一言で言えば泥棒と一緒です。
会社員は、別にボランティアとして会社で働いているわけではありません。給料がもらえるから働いているわけです。
それなのに、払うべき給料を払わずに踏み倒すというのは、他人の労働力を盗んでいることと一緒です。サービス残業を強要するということは、会社が社員に対して窃盗を働いていることと変わりません。

残業よりも最悪なのはサービス残業ですよね。
残業だけでもやってられないのに、その分の賃金がもらえないとかありえない話ですけど、これもよく聞く話ですよね。
タイムカード押してから残業してるとか。
冷静に考えれば、こういった状況もおかしなことだとわかるはずなのに。

有給休暇

有給休暇は自由に使えるから意味があるのです。
「年に有給休暇が◯日ある」というのは、この日数は使途に関係なく休んでいい、という約束を会社と社員の間で交わしたことと一緒です。有給休暇を付与された分だけ使い切る、というのは入社時の契約に織り込まれているのです。
それなのに、実際に好きなように使うと会社での立場が悪くなるとか、仕事量が多すぎてとても使うことができないというような状況を作るのは、会社による約束違反と同じことです。到底許されるものではありません。

有給休暇がとれないということもよくある話ですね。
有給休暇は好きな時に使えるから意味があるわけであって、なおかつすべて使い切るのが普通なんですよ。それがあたりまえの話。
にも関わらずちゃんととれてる人がどれくらいいるのか。
調べたらすぐ出てくると思いますけど、外国と比べた場合、日本の有給休暇取得率の低さといったらひどいものです。

サービス過多は従業員にしわ寄せが

日本には、「アルバイトだろうと何だろうと、お金をもらった以上はプロとしてきっちり責任を果たすべきだ」という謎の考え方があり、もらえるお金の額に応じてそれ相応の働きをすればいい、というような「値段相応」な考え方は、驚くほど浸透していません。

こういうことによって従業員は割を食っているわけです。
日本のサービス業がサービスの質を争った結果、日本人にはサービスにお金を払うという感覚がなくなってしまったんですよ。
それがあたりまえになってしまった。お客様が神様みたいな。
そもそも、数百円の牛丼屋でサービスを求めること自体がおかしな話です。
ちょっと料理が出てくるのがおそいだけで、クレームをつけるとか。
数百円払っただけで、そこまで高圧的な態度がとれるとか、ちょっと頭がおかしいんじゃないかと思うレベル。

多様な価値観があるはずなのに

もちろん、仕事が好きで仕事に打ち込みたいという人は別にそれでもいいのです。僕はそういう生き方を否定しているわけではありません。
ただ、そのような生き方こそが絶対的な善で、仕事最優先の生き方ができないヤツはクズだ、三流だ、無能だ——といったように他の価値観を排除するような風潮は明らかにおかしいと言いたいのです。
人生において、どの活動の優先順位を高くしたいかは、各自が自分の価値観に応じて決めればよいものではないのでしょうか。
仕事に生きるのもいいですし、家族や趣味のために生きるというのもその人の自由です。「仕事はほどほどにしておいて、そのかわりプライベートで精一杯自分のやりたいことをやる」というような生き方だって、十分合理的で尊重されるべき考え方です。そういう人たちが、毎日残業せずに定時に帰りたい、やりがいなんてどうでもいいのでなるべく楽な仕事がしたい、と言って何が悪いのでしょうか。
「人間は仕事に生きてこそ幸せなんだ」という考え方を他人に強要するのは、結局価値観の押し付けでしかありません。

結局の所、こういった価値観の多様性を認めないことが原因になっている部分はとても大きいですね。
仕事に限らず、日本は価値観の多様性があまり尊重されていません。
なので、僕の中ではだいたいの問題は「価値観の多様性が尊重されていないからだ」という結論に達してしまいます。
価値観なんて人それぞれだし、ましてや自分の価値観を他人に押し付けるなんてことはしてはいけない。
たとえ他人の価値観が認められなくても、そういう価値観もあるんだと理解することはできるはずなんです。
こういった仕事至上主義の価値観が絶対的なものとして君臨している限りは残業だ、有給休暇だといった問題は解決されないわけです。
僕自身は仕事至上主義の人がいてもいいし、そうでない人がいてもいいと思ってます。ていうか、そんなのどうでもよくないですか。その人の好きなように働けばいいでしょ。

最後に

ずっと「うん、うん、その通り」と思いながら読んでいました。
終始、あたりまえのことしか書いてないんですもん。
過労死なんて不名誉な言葉が日本で生まれた以上、日本人の働き方はやっぱり異常なんだと思わざるを得ません。
会社行くのが嫌だと思ったり、このままだとうつ病にでもなっちゃうんじゃないかとか思っているならこの本を読んでみてはいかがでしょう。
あたりまえの感覚を取り戻せるかもしれません。
そしたら会社を辞めるとか、次の一歩が踏み出せるかもしれませんしね。
でも、僕みたいに無職にならないように。無職なかなか大変です。