牛乳を飲む場所

夏だ。
まだ梅雨にもなっていないのに、気温だけ見れば夏なのだ。夏が大好きな私にとっては結構な話である。

にも関わらず家にこもってばかり。なぜかって、それはお金がないからである。無職はお金がないのだ。誰にも会わず、家にこもっている。出掛けるのはスーパーくらいなものである。物価にだけは詳しくなってきたかもしれない。特に野菜。農家はこれで儲かるのかと心配になるばかり。

そんな日々を送っているのだが、久しぶりに人と会った。その方のお宅へお邪魔し、一緒に夕食を食べた。焼肉だ。ちゃんと肉を食べたのはいつぶりだろうか。もう随分と贅沢とは無縁だ。会社員時代もそこまで贅沢はしていなかったが……。

この日も暖かい日だった。少し汗ばむくらい。
部屋にいても暑い。当然ホットプレートも使っているし、暑くなる。でも、まだこの時期に冷房を入れようなんていう考えはない。それに私は夏が大好きな人間だ。むしろちょっと暑いくらいが好きだったりする。だから室温について何の不満もない。だいたい客が文句を言う話でもない。

私は昔から夏が好き、暑いのが好き、直射日光最高、みたいな人間だった。だから避暑という行為を行った記憶があまりない。みなさんがどういう暑さのしのぎ方をしているのかあまり想像がつかないというのが本音だ。
冷房をつけて部屋をガンガンに冷やす。冷たい食べ物、飲み物を口にする。水着になってウェイウェイするくらいしか思いつかない。

ちなみに私はアイスが大好きだ。これは暑さをしのぐために食べるのではなく、ただ好きなのである。むしろ冬に食うアイスがわりと好きだったりする。

焼肉を食べ終わってから、部屋でマンガを読んだりなんかしていた。私は特になんとも感じていなかったのだが、どうも部屋の主は暑かったらしい。
そんな時に、主がどうやって暑さをしのいだか。

「ベランダ出て、牛乳飲んでくる」

私には訳がわからない。この行動がとにかくおもしろいのである。笑った。久しぶりに笑った。なるほど、暑さをしのぐためにベランダで牛乳を飲むものなのか。
私は暑いからといってベランダに出たことがない。暑いからといって牛乳を飲んだこともない。(牛乳はあまり好きではない)
それなのに、両方の合わせ技。予期せぬ行動だった。

言うなれば、玄関行って本読んでくる、これと同じくらいには頭に「?」が浮かぶようなことだった。

ベランダで牛乳飲むものなんだな。
だからおしゃれなカフェにはテラス席があるのか。

あまり好きではないが牛乳を買って、ベランダに置いてみた。

これで今年の夏も大丈夫だろう。