カップに入ったアツアツのコーヒーを一瞬のうちにして消すことができますか?
まるで手品かのように。
僕はパソコンをいじるのが好きだから、よくパソコンを開くことができる場所へ行く。
それはファミレスだったりファーストフード店だったりカフェだ。
つい先日もいつものようにお店へと入ったわけです。
コーヒーが好きだから、たいがいコーヒーを頼む。
カウンターで注文を済ませ、出てきたコーヒーを持って席を探し始めた。
コーヒーはトレーに載っている状態だ。
要するに僕はトレーを持って、空いている席を探しながら店内をウロウロしていた。
その日は全然空席が見つからないほど混雑していた。
そのお店は客席が2階と3階にある。
2階では席が見つからず、3階へと向かおうとしたその時である。
階段の踊り場でついに僕はその能力を発揮した。
Mr.マリックもビックリである。
カップに入ったアツアツのコーヒーを消すことに成功した。
僕は片手でコーヒーの入ったカップが載ったトレーを持っていたんだけど、そのトレーを持っている手の方の肩を壁に強くぶつけた。
その反動でトレーはバランスを崩す。
ここまでくればお分かりだと思う。
僕は床に盛大にコーヒーをぶちまけたのだ。
「やってもうた……。」
無意識のうちに周りに聞こえるくらいのボリュームで、そうつぶやいていた。
もはやつぶやきではない。
カップはテイクアウトできる用に作られたものだから割れることはない。
僕は空になったカップを拾い上げ、落とした弾みで外れてしまった蓋をかぶせた。
ここから僕の姿を見た人は、普通にコーヒーを運んでいるお客さんだ。
なぜか床がコーヒーの海になっている。ただそれだけ。
とりあえず、あまりの恥ずかしさに3階の席へ。
なんとか空席も見つかり、席を確保することができた。
さてここからである。
あの汚れた階段の踊り場をどうするべきか。
結局店員さんに言うこともできずそのまま放置してしまいました。
ごめんなさい。
そして3階の人は僕がそんなことをしでかしたことを知らない。
ということで、素知らぬ顔をして席に座り続けた。
おもむろにパソコンを取り出し、作業を開始する。
しかしだ。
いつまで経ってもコーヒーを口にすることのない僕。
そりゃあそうだ。
空っぽなんだから。
隣の席にいた3人組の1人は、その違和感に気付き始めているようだった。
それでも僕は動じない。
その日、僕は空っぽのカップを脇に置いて、パソコンをいじり続けたのだ。
カップの中から一瞬にしてコーヒーを消すことは出来ましたが、この恥ずかしい出来事の記憶は僕の頭の中からなかなか消せそうにない。