合う人に会う

夏が大好きすぎるがゆえ、冬の間はおとなしくしておこうとある時に決めた。冬の間は家にこもり、お金を貯めて、夏になったらたくさん旅に出るのだと。しかし、そうなると冬の間にすることがなくて全然楽しくない。だいたいはカフェに行って本を読んでいる。それで十分いい1日を送っていると以前は感じていたのだが、それがなんだかつまらなくなってきたのだ。

思えば僕は日常が苦手だ。刺激の少ない日常をおもしろく感じられなくて頻繁に旅に出る。ただ日常でも楽しく感じることがある。どうやら人と会っている時は楽しい。そんなことに気づいてしまった。

まったく気づきたくなかった事実である。僕は普段、何をするにも1人だ。旅に出るのも1人だし、ご飯を食べるのも1人。映画を観るのも、買い物へ行くのも1人。なんなら飲みに行くのも1人で行くようになった。1人でいることを寂しいと感じることがまったくと言っていいほどない。テレビで脳科学者の方が言っていたが、人間の中には孤独耐性の強い人が少ないが一定の割合でいるらしい。それが僕だ。無職になった時、1か月以上誰とも接することがなかったがまったく平気だった。その期間一言も声を発していない。そもそも僕は人間が嫌いだし、人付き合いもめんどくさいと思っている。何をしていても1人で十分楽しいはずなのだが、最近そうでもなくなってきた。

なんてことない日常を楽しくするには誰かと会うしかない。しかし僕には友達がいない。もはや友達の作り方などわかるわけがないし、できる気もしない。自分と合う人間があまりにも少ないのだ。どうやら僕はマイノリティーらしい。考えてみたのだが、僕はあまりにも興味の幅が広く、趣味が多かったりする。そんな僕と感覚が似ている人間はなかなかいないのだ。大前提としておしゃれに興味がある人としか友達にはなりたくないのだけれど、おしゃれに興味がある人たちは楽しい雰囲気の場所が好きだったりするし、ノリを大事にしている。僕は暗い人間なので、そういう人はとても苦手なのだ。この時点で気が合いそうな人がなかなかいない。おしゃれで暗い人間って少ないんですよ。さらに暗い人間はインドアっぽいイメージを持たれがちだが、僕はとてもアクティブなのである。とにかくどこかへ出かけたい。出かけたところではしゃぐかと言えばまったくそんなことはない。だから人はたぶん僕といても楽しくないのだ。いやはや絶望的な状況。

彼女がいるときはとても助かる。僕が行きたいと思ったところに誘えば、笑顔で賛同してくれる。どこにだって付いてきてくれる。楽しんでいるかはわからないけれど、行きたくないなどと断られた経験は1度もない。歴代の彼女には感謝しかない。それならばどこかへ出かけるときに、興味がありそうな人を誘えばいいと思われるかもしれない。趣味が多いなら、1つの趣味ごとに友達を作ればいいのだと。例えば美術館に行くときにはアートが好きな友人を誘う。しかしそれでも問題が起こる。遊ぶとなれば最後に飲みに行くことになる。そもそもお酒が飲めない人とはたぶん仲良くならないので、お酒が飲める前提で続ける。お酒の席では様々な話が出てくるのだが、その人との共通の話題なんてのはいつか尽きてしまう。僕はスポーツなんかはなんでも好きでスポーツの話をしたりもするんだけど、アート好きでスポーツ好きもなかなか少なかったりする。これはあくまで1つの例なのだけれど、とにかくたくさんのことを話したくなるのが僕なのです。最近読んだ本の話もしたいし、テレビの話もしたい。そんな中、今度旅行で行こうと思っている場所の話をして、なんなら一緒に行こうと誘いたい。お酒が進めば下ネタだって話すかもしれないし、女の子の話だってしたいのだ。

とにかくこんなことを考え出すと友達なんてものができる気がまったくしない。わかっていますよ、ただただ僕がこじらせているだけだってことは。それでも日常が楽しくなくなってきた以上、友達を作りたいのです。だって1人で出かけても旅先でもない限りつまらない写真しか撮れないんです。やっぱりポートレートが撮りたい。日常で撮っていて楽しいのは映えるご飯や美しい景色ではなく“人”だ。だからこそ誰かと遊ばないといけない。

最近、ある程度確信したことがある。残りの人生は合う人に会うために費やせばいい。自分のことばかり考える人生は全然意味がない。誰かと関係性を築くことこそが人生の醍醐味なのだと。世の中のほとんどの人はそんなこと考える必要もなく自然と学生時代から理解していることだろう。しかし、生き方音痴の僕は30代半ばに差し掛かるまで気づかなかったのだ。

毎日毎日カフェで本を読んでいるだけではこんな写真しか撮れない。つまらん写真だ。

カフェで読書

おー、見た目がいいねと思ってシャッターを切ったとしてもこんなものだ。

カレー

実にくだらない写真だと思う。

よしっ、友達を作る努力をしようと思ったところで何をすればいいのか。

そして今日もどこのカフェで本を読もうかとスマホでカフェを検索している。